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東京地方裁判所 平成12年(ワ)1292号・平12年(ワ)11857号 判決

主文

一  被告は、原告に対し、金四一万二六六四円及びこれに対する平成一一年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告は、被告に対し、金三一万五三四六円及びこれに対する平成一一年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告の被告に対するその他の本訴請求を棄却する。

四  被告の原告に対するその他の反訴請求を棄却する。

五  訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを一〇分し、その七を被告の負担とし、その他を原告の負担とする。

六  この判決の第一項及び第二項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の請求

一  原告の本訴請求

被告は、原告に対し、金九〇万三三三〇円及びこれに対する平成一一年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告の反訴請求

原告は、被告に対し、金一七〇万七三七五円及びこれに対する平成一一年三月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、スキー場においてスキーで滑降中の原告とスノーボードで滑降中の被告とが衝突して双方が傷害を負った事故について、原告が右事故は被告の過失によって発生したものであるとして、被告に対し不法行為(民法七〇九条)に基づき損害賠償の支払を求めたところ、被告が反訴を提起し、右事故は原告の過失によって発生したものであるとして、原告に対し不法行為(民法七〇九条)に基づき損害賠償の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等(証拠を摘示しない事実は、争いのない事実である。)

1  原告と被告との間で次の事故が発生した(以下この事故を「本件事故」という。)

(一) 日時 平成一一年三月二七日午後二時ころ

(二) 場所 新潟県南魚沼郡塩沢町石打

石打丸山スキー場(以下「本件スキー場」という。)中央第三リフト付近初級者コース(以下「本件コース」という。)斜面

(三) 態様 スキーで滑降中の原告と、スノーボードで滑降中の被告とが衝突し、双方が転倒した。

(本件事故発生時刻について乙一四、一七、双方の転倒について甲八、乙一四、原告、被告)

2  原告は、本件事故によって両膝関節捻挫の傷害を受け(甲三、四の1、原告)、他方被告は、本件事故によって顔面打撲、歯牙欠損(門歯)、右肩右胸部挫傷、右腹部打撲、外傷性血尿の傷害を受けた(乙二、三、被告)。

二  争点

本件事故の態様が最大の争点であり、その態様に従って、原告、被告のどちらに事故発生について過失があったかが問題になるほか、原告、被告それぞれの損害がいくらかが問題になる。

三  争点に関する当事者の主張

1  本件事故の態様及び双方の過失について

(以下においては、左右の方向は斜面の上(山側)から下(谷側)を見た表現とする。)

(一) 原告の主張

(1)  本件事故の態様

当日原告は、本件スキー場のスキースクールを受講した。まず、指導員である飯酒盃大祐が本件コースの右側斜面を滑降し、同リフト乗場の左側付近まで移動し停止し、原告は飯酒盃の立っている位置付近を目標にしてパラレルターンで滑降を開始した。

滑降を始めて間もなく、原告は、左斜面をスノーボードで右方向に滑降している被告を認識した。原告は、そのまま真っ直ぐ滑ると被告と衝突するかもしれないと判断し、右にターンをし大きく右方向へ移動した。その際、被告は原告よりも後方に位置していたので、被告は原告の視界から消えた状態になった。

その後原告は、飯酒盃が立っている位置よりも大きく右側に行ってしまったことから、左方向に滑降すべく左にターンをした直後、被告が右方向に滑降を継続していたことから、回避できず衝突した。

(2)  被告の過失

被告は、周囲を滑降している人の動静に注意し、十分に安全を確認した上で滑降すべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然と滑降を続けた過失により、本件事故を惹起したものである。

(二) 被告の主張

(1)  本件事故の態様

被告は、当日友人の宮川貴と本件スキー場に来て、上方のコースをスノーボードで滑降し、本件事故の起きた初級者コースの前の平らな部分にいったん停止した。そして被告は、宮川と下の中央第三リフト乗場で会うことを約束し、被告が先に出発した。なお、被告は当時、左足を前にして滑るレギュラースタンスでスノーボードを装着していた。

被告は、左右に大きくターンしながら右に向かって滑降中、スキー等によって自然にできたこぶを右手にして左に小さいターンで回避した後、右にターンして五メートルほど進んだ後、再び左にターンし、五から一〇メートルほど進んだ地点で原告から追突された。

いきなり後方から原告に衝突された被告は、体が向いている前方(谷側)に突き飛ばされ、そのまま頭を谷側にしてつぶれたような格好で雪の上にたたきつけられた。この時、被告は前歯がねじれるような曲がったような嫌な感覚を受けるとともに、激痛を感じた。突き飛ばされた被告は、自分で手をついて体を起こし、しゃがんだ状態で上半身をねじって後ろ(山側)を見ると、五メートルほど後ろに原告が左側を下にしてうずくまるように倒れていた。

(2)  原告の過失

本件事故は、原告の追突行為によって発生したものであるから、原告には当然過失がある。

2  損害

(一) 原告の主張(原告の損害)

(1)  治療状況

(ア) 原告は、平成一一年三月二九日から同年六月二九日まで、佐藤クリニックに通院した(実治療日数三三日)。

(イ) また、原告は、平成一一年五月一四日に、MRI検査のために社団法人練馬区医師会医療健診センターに通院した(実通院日数一日)。

(2)  損害

(ア) 治療費 二万三三三〇円

(イ) 慰謝料    八〇万円

(ウ) 弁護士費用   八万円

合計  九〇万三三三〇円

(3)  本訴請求の内容

よって、原告は被告に対し、不法行為に基づき、九〇万三三三〇円とこれに対する本件事故日である平成一一年三月二七日以降の民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(二) 被告の主張(被告の損害)

(1)  治療状況

被告は、事故当日の平成一一年三月二七日から同年五月二〇日まで、石打診療所、浅井整形外科、長谷川歯科に通院し治療を受けた(実通院日数一二日)。

(2)  損害

(ア) 治療費1 一二万四一七五円

(イ) 治療費2 四三万三二〇〇円

破折した歯牙(C2)について、将来(一〇年に一度)の補綴(九万四五〇〇円)四回分と一年に一回の歯牙検査(一三八〇円)四〇回分が必要である。

(ウ) 慰謝料     一〇〇万円

(エ) 弁護士費用    一五万円

合計   一七〇万七三七五円

(3)  反訴請求の内容

よって、被告は原告に対し、不法行為に基づき、一七〇万七三七五円とこれに対する本件事故発生日である平成一一年三月二七日以降の民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三当裁判所の判断

一  本件事故発生の状況(事故態様)

1  前記「争いのない事実等」に証拠(甲八、乙一、一四、一五、一七、原告、被告、証人宮川)を併せると、次の事実を認めることができる。

(一) 本件事故発生当時の天候は曇りで、多少小雨混じりの雪が降っていたが、霧は出ておらず、視界は普通であった。コースの雪の状態はザラメ状であった。

(二) 原告は、本件事故の一〇年余り前からスキーを始め、年に一〇回位はスキー場で滑っており、平成一一年二月にスキー検定の二級を取得していた。

事故当日の平成一一年三月二七日は、原告は、スキー検定の一級の試験を受検するため、本件スキー場のスキースクールを受講していた。

(三) 一方、被告は、平成八年一月、スキー場でアルバイトをしていた際、スノーボードのセミプロからスノーボードの指導を受けてスノーボードを始めた。被告は、平成八年は、一月から三月末までほぼ毎日スノーボードを練習した。被告は、平成九年、一〇年も、それぞれ一シーズンで二〇回位はスキー場に通いスノーボードで滑った。そして、平成一一年は、本件事故の前に七回位スキー場でスノーボードで滑っていた。なお、被告はスノーボード検定は受検していない。

本件事故当日、被告は、友人の宮川貴と本件スキー場に来て、午前一一時ころから二人でスノーボードで滑っていた。

(四) スキースクールのインストラクターである飯酒盃は、午後二時ころ、本件コースの上部右側(リフト側)の平らな場所で、受講者四名に対し、一人ずつ下方に自由に滑るよう指示し、最初に自ら滑走して、中央第三リフト乗場のやや左側で停止して、受講者が滑走してくるのを見守った。受講者のうち原告が最初に、飯酒盃の方に向けてコースの右側(リフト寄り)をパラレルターンで滑走し始めた。

(五) 一方被告は、ほぼ同じころ、宮川とともに、本件コースより上のコースからスノーボードで滑ってきて、本件コース上部の平らな部分にいったん停止した。そして、宮川と、下方の中央第三リフト乗場付近で落ち合うことにして、宮川よりも先に滑走し始めた。被告は、当日、左足を前にしたレギュラースタンスでスノーボードを装着していた。

(六) その後、本件コース右側のリフト付近にリフトに添って張ってあるネットに比較的近く、かつ、中央第三リフト乗場にも比較的近い本件コースの下方部分で原告と被告とが衝突して、両名とも転倒する本件事故が発生した。この事故により、原告は、両膝関節捻挫の傷害を負い、被告は、顔面打撲、歯牙欠損(門歯)、右肩右胸部挫傷、右腹部打撲、外傷性血尿の傷害を負った。

(七) 被告が当時履いていた右足のブーツの先の部分(二箇所)と、ブーツを固定する合成樹脂製の用具の端の部分に硬い物で切ったような傷が付いていた。この三箇所の傷は連続したほぼ水平の位置にあり、本件事故前はなかった。

また、ボードの二つのブーツ固定部分の中間付近の各エッジ部分に、それぞれ、一部塗料がはげた傷が付いていた。

(八) 飯酒盃は、原告が滑降してくるのを目で追っていて、原告と被告とが衝突したのを目撃した。

2  ところで、原告は、甲八の陳述書及び本人尋問において、おおむね次のように供述している。すなわち、滑り始めて間もなく、原告は、右から左方向に滑っている時、自己の左方やや後方をスノーボードで右方向に滑走している被告に気が付いた。原告は、速度を出したり緩めたりで予測がつきにくい滑り方等に若干の不安を覚えて、右にターンをしてネット方向に滑っていった。ネットに近づいてきたころ、肩口から左後方を一瞬見たところ、被告が下方(谷側)にターンをしようとしているように見えたので、ターンをしてもよいと思いそのまましばらく滑ってから左ターンをし始めたところ、突然原告の体左側が被告の体に衝突した、というのである。

一方、被告は、乙一四の陳述書及び本人尋問において、おおむね次のように供述している。すなわち、被告は、左右に大きくターンしながら滑走していたところ、途中にスキー等によって自然にできたこぶがあったので、それを右にして左方に小さいターンで回避した後、右にターンして五メートルほど進んだ地点で左にターンし、五から一〇メートルほど進んだ地点で突然原告に後ろから追突された。被告は、追突されるまで原告には全く気付いていなかった。被告は、後方より追突されて、体が向いている前方(谷側)に突き飛ばされ、そのまま頭を谷側にしてカエルがつぶれたような格好で雪の上にたたきつけられ、この時、右の前歯が曲がったような嫌な感触とともに激痛が走った、というのである。

本件事故を目撃したインストラクターの飯酒盃が原告代理人に対し電話で話した事故発生の状況(甲七の1、2)は、おおむね原告の右供述内容に符合する。

3  そこで、これらの事実及び供述内容に基づいて、本件事故態様について検討する。

(一) まず、被告の受けた傷害は、顔面、口の右側(右の門歯)、右肩、右胸部、右腹部にわたるもので、すべて体の前面右側に発生したものである。他方、被告は背中に追突された時の衝撃はかなり強いものであったと供述するが、証拠(被告)と弁論の全趣旨によれば、他覚所見としても、自覚症状としても、背部には傷害は発生しなかったものと認められる。そこで、本件事故の態様が被告の供述するようなものであったとすれば、被告の傷害はすべて背後から追突されて前に転倒し体の右側部分を雪面等に打ちつけたことにより発生したことになる。しかし、傷害部位がかなり広範囲にわたること、右側に集中していること、外傷性血尿は腹部に外力が加わったことによると考えられるが、雪面等の比較的平坦な部分に腹部を打ちつけて発生したというよりも、積極的に何かが被告の腹部に衝突したことによるものと考える方が自然であること、被告の背部に傷害が全く発生しなかったことなどを併せると、これらの被告の傷害は被告の体の前面右側に原告の体が衝突したことによって発生したと考える方が自然というべきである。また、原告のいう態様であれば、原告の体の左側面部分と原告の体の全面右側がかなりのエネルギーをもって衝突したことになるから、この点からも原告のいう事故態様の方が被告の受傷の態様に符合するといえる。

また、被告のブーツの二箇所の傷とブーツの固定用具の傷は、ブーツの前側から原告のスキーのエッジ等の硬い部分が当たったことによって発生したと考える方が自然であり、ブーツ等の傷の状況は原告の供述する事故態様の方により符合するということができる。他方、スノーボードの二箇所の傷は、本件事故の際のものかどうかにわかに確定し難いが、仮にそうであったとすれば、被告のいう事故態様にも原告のいう事故態様にも矛盾しないと考えられ、それは被告の主張だけを指示する事情ではない。

更に、飯酒盃の供述(甲七の1、2)は、反対尋問を経ていないが(ちなみに、双方とも同人について証人申請をしていない。)、同人は原告の滑降状況を意識して見ていたものであるから、両者の位置関係、衝突に至る両者の滑降の軌跡・方向等のおおまかな状況についての供述は、一応の信用性を肯定することができる。したがって、同人の右供述も、原告のいう事故態様の方を支持する事情の一つである。

(二) 以上の事情を総合するならば、本件事故態様については原告の供述を採用すべきであり、同供述に前記認定の事実を併せると、原告は、滑り始めて間もなく、右から左前方方向に滑っている時、左方やや後方をスノーボードで右前方方向に滑走している被告に気が付き、その挙動から若干の不安を覚えて、右にターンをしてネット方向に滑って行き、その後肩口から左後方を一瞬見たところ、被告が下方(谷側)にターンをしようとしているように見えたので、左ターンをしてもよいと考え、そのまましばらく滑って左ターンをし始めたところ、突然原告の体左側が被告の体に衝突したものと認めるのが相当である。

(三) ところで、被告は、原告が事故直後「すみません。」などと述べて謝ったと供述するところ(乙一四にも同趣旨の部分がある。)、本件証拠上この点はにわかに確定しがたい。しかし、証拠(原告、被告、証人宮川)によれば、被告は本件事故によってかなりの血を流していたことが認められるから、これを見て驚いた原告がそのような趣旨の言葉を発したこともあり得ることと考えられ、また前記(一)のような事情をも考慮すると、事故直後に原告が本件事故について一方的に責任がある旨を認めていたとは認めることはできない(その旨をいう乙一四及び被告の供述は採用することができない。)。

また、証人宮川は、一部被告の主張に沿う証言をしている。しかし、同人は直接衝突場面を目撃しておらず、また、事故直後の状況についても、同証言に照らし、同人の当時の認識ないし記憶は必ずしも明確ではないと認められる。そして、前記(一)のような諸事情にも照らすと、同人の証言は前記認定を左右しないというべきである。

なお、証拠(甲一)によれば、原告は平成一一年四月、保険会社の依頼による調査に際し、原告が被告の右肩から背中にかけて衝突した旨述べたことが認められる。この点に関し原告は、本人尋問及び甲八の陳述書において、当時原告はスノーボードをしたことがなく、被告が右足を前にしてスノーボードを装着していたと思っていたため、そのように述べたものである旨供述している。原告にとって衝突は突然のことであったと認められるから、結局被告の体のどの部位に原告が衝突したのかについては、原告には確たる記憶ないし認識がなかったとみるのが自然であり、この点が本件事故態様に関する前記認定を左右するものとは解されない。

二  双方の過失及び過失割合

1  被告の過失

前記一の1及び3の(二)の認定事実によれば、被告は、原告との位置関係及び自らの視界の状況から、事故の少し前から原告の動静を完全に把握できる状態にあり、通常の注意を払えば、原告がリフト(ネット)方向に滑っていたという点からして、原告がいずれターンをするであろうことが予測できたというべきである。したがって、被告は、原告との衝突を避けるため、早めに左にターンをするなどの措置をとるべきであったと認められる。しかし、証拠(乙一四、被告)によれば、事故発生前被告は原告の存在及び動静を全く認識していなかったから、本件事故について被告には自らの進路方向の安全の確認を怠った過失があると認められる。

2  原告の過失

他方、原告は、前記一の1及び3の(二)の認定事実によれば、衝突の前から被告の存在に気づき、その挙動に注意を払っていたものの、衝突の少し前に被告を見た後は、被告は自分の方には来ないだろうと判断したまま、その後注意を払うことをしなかったと認められる。また、右事実と証拠(甲七の1、2)とを併せると、事故直前には被告は原告の方向に左から右に横方向に滑走してきたものと認められるから、原告が被告の挙動を見誤った可能性も否定できない。したがって、原告にも自らの進路方向の安全の確認を怠った過失があると認められる。

3  過失割合

上記1、2の事情、特に双方の位置関係及び挙動を考えると、過失は被告の方が大きいと認められ、これらの諸事情を総合考慮し、過失割合は原告が三五、被告が六五と認めるのが相当である。

したがって、原告の損害については三五パーセントの過失相殺を、被告の損害については六五パーセントの過失相殺をするのが妥当である。

三  双方の損害

1  原告の損害

(一) 治療費等 二万三三三〇円

証拠(甲三、四の1、2、五、六の1から38、原告)によれば、原告は、平成一一年三月二九日から同年六月二九日まで佐藤クリニックに通院して治療を受け(実治療日数三三日)、平成一一年五月一四日にMRI検査のために社団法人練馬区医師会医療健診センターに通院したこと(実通院日数一日)、その治療費及び診断書代として合計二万三三三〇円を要したことが認められる。

(二) 傷害慰謝料 五五万円

原告の傷害の内容、程度、治療の経過等を総合して、傷害慰謝料として五五万円を認めるのが相当である。

(三) (一)と(二)との合計 五七万三三三〇円

(四) 過失相殺 三七万二六六四円

右(三)の損害額に三五パーセントの過失相殺をすると、三七万二六六四円となる。

(五) 弁護士費用 四万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害は、四万円と認める。

(六) 最終的な損害額 四一万二六六四円

2  被告の損害

(一) 治療費1 一二万四一七五円

証拠(乙二から一〇、一一の1から3、一二、一三、被告)と弁論の全趣旨によれば、被告は、事故当日の平成一一年三月二七日から同年五月二〇日まで、石打診療所、浅井整形外科、長谷川歯科に通院し治療を受けたこと(実通院日数一二日)、これらの治療費及び診断書代として合計一二万四一七五円を要したことが認められる。

(二) 治療費2 四万一一〇〇円

(1)  将来の補綴治療代 三万五六〇七円

証拠(乙九、被告)によれば、被告の年齢を考慮すると、将来一回は冠の入れ直しが必要になる可能性が高いこと、その治療費の現在の見積額は九万四五〇〇円であることが認められる。乙一四中及び被告の供述中の右認定に反する部分は採用することができない。そこで、これに関する損害は、冠の入れ直しが二〇年後に発生するとして、ライプニッツ式によりこの間の中間利息を控除して算定するのが相当である。そうすると、これに関する損害は、次の計算式のとおり三万五六〇七円となる。

(計算式)

九万四五〇〇円×〇・三七六八=三万五六〇七円

(2)  検査代 五四九三円

被告は、本人尋問において、半年に一回補綴部分のメンテナンスのために通院する必要があり、現在もその頻度で通院している旨供述しているものの、右供述以外右各事実を的確に証明する証拠は提出されていない。しかし、証拠(乙四、原告)によれば、門歯の欠損の治療は差し歯によって行ったことが認められるから、今後一定程度のメンテナンスは必要であろうと推認することができる。そこで、これらの点を総合考慮し、今後メンテナンスが四年に一回、合計一〇回必要であり、一回の費用は被告の主張する一三八〇円が必要であるとして、これに関する損害を算定するのが相当である。この費用を計算すると、次の計算式のとおり五四九三円となる。

(計算式)

一三八〇円×(〇・八二二七+〇・六七六八+〇・五五六八+〇・四五八一+〇・三七六八+〇・三一〇〇+〇・二五五〇+〇・二〇九八+〇・一七二六+〇・一四二〇)=五四九三円

(三) 傷害慰謝料 六五万円

被告の傷害の内容、程度、治療の経過等を総合して、傷害慰謝料として六五万円を認めるのが相当である。

(四) 右(一)から(三)までの合計 八一万五二七五円

(五) 過失相殺 二八万五三四六円

右(四)の損害額に六五パーセントの過失相殺をすると、二八万五三四六円となる。

(六) 弁護士費用 三万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害は、三万円と認める。

(七) 最終的な損害額 三一万五三四六円

第四結論

以上の次第で、原告の本訴請求は、四一万二六六四円とこれに対する本件事故の日である平成一一年三月二七日以降の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その他は理由がないからこれを棄却し、被告の反訴請求は、三一万五三四六円とこれに対する本件事故の日である平成一一年三月二七日以降の民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その他は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩田好二)

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